京都・寺町のレトロな洋菓子店「京都 村上開新堂」で、手みやげ&ふだんのおやつを | ことりっぷ

京都・寺町通の「京都 村上開新堂」は、創業110余年、京都でいちばん古い歴史をもつ洋菓子店です。人気のロシアケーキ、柑橘系のゼリー、口あたりのなめらかな寺町バニラプリン、予約は1年待ち(!)の缶入りクッキーなどの洋菓子はもちろんのこと、映画のワンシーンに登場しそうなクラシカルなたたずまいも魅力的。手みやげや、大切な人への贈りもの、ふだんのおやつを求め、お店の扉をそっと開けてみませんか。
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上質なアイテムが集まる寺町通へ

季節に合わせたウィンドウのディスプレイも見逃せない
地下鉄東西線の京都市役所前駅から北へ徒歩4分ほど。和菓子、和文具、日本茶、工芸品などの老舗やアンティークショップが連なる寺町通にあります。通り側は、外壁に白漆喰をあしらった木造の洋館、奥が純和風という和洋折衷の珍しいつくりをしています。

店内に掲げられた扁額は“明治三筆”のひとり、日下部鳴鶴(めいかく)によるもの
扉を開けて店内に入ると、弧を描くガラスのショーケース、市松模様のフロアタイル、大理石の柱、照明器具など、長い時を経て風合いを増した美しい意匠が目に留まります。

店内の随所にあしらわれた美しいデザインに注目

店内から望む寺町通の風景
京都 村上開新堂のはじまり

古写真に向かって左側が創業当時の店舗。現在の店舗は写真右側の建物(1935年築)
江戸時代の終わりまでは代々宮中で饗膳の料理人をつとめていた村上家。東京遷都にともなって東京に住まいを移したのちの1874(明治7)年、村上光保氏が日本ではじめての洋菓子店「村上開新堂」を開きました。その光保氏から西洋菓子を学んだ甥の清太郎氏が、村上家発祥地の京都に戻って1907(明治40)年に開いたのが京都「村上開新堂」です。以来、元祖とは異なる独自のレシピや商品を生み出し、地元京都で永く愛されてきました。
フォトジェニックな「ロシアケーキ」

「ロシアケーキ」各227円は1枚から購入可能
たとえばゆずジャムサンドなら、ゆずの名産地・高知県馬路村のゆずジャムを2種ブレンドして炊き直し、粘度や水分量を調節するといったように、4代目曰く「100年後もこの形で受け継がれていくように」ひとつひとつ工夫を凝らしています。

箱入りを希望の場合は10個入2570円~
初夏から晩夏限定「オレンジゼリー」

「オレンジゼリー」1個680円は4~9月の限定販売
紀州のみかんをまるごと器に見立てた大正時代からの看板商品「好事福盧(こうずぶくろ)」は11~3月限定ですが、4~9月には「オレンジゼリー」がお目見えします。フレッシュなサンキストオレンジの果肉をくり抜いて手搾りした果汁を、気候によってゼラチンの量を微調整しながらゼリーに仕立てた涼菓。スプーンですくって口に入れるとちゅるんとすべり込み、爽やかなオレンジの風味が広がります。
4代目が生み出した新商品

「寺町バニラプリン」1個518円。蝋引き紐の巾着入り
4代目の村上彰一さんが店を任されるようになって以降、マドレーヌやダックワーズなど“36年ぶり”の商品が誕生し、話題に。そのうちのひとつがこちらの「寺町バニラプリン」です。卵は卵黄のみ、牛乳のほかに生クリームをたっぷり使っているため、口当たりはとろりとなめらか。ゼリーのようにあっさりとした洋菓子が多いため、あえて濃厚な味わいに仕上げたそう。バニラビーンズの香りがほどよく効いていて、後味の良さにうっとりさせられます。

マドレーヌ、ダックワーズなどショーケースに並ぶ焼き菓子
「昔のままを変えず、過度に味を足さず、あくまでもシンプルに。添加物や香料はなるべく使わないように」。そんな「村上開新堂らしさ」を大切にしながら手づくりにこだわった洋菓子の数々は、これから次の50年、100年先へと受け継がれていくことでしょう。
唯一無二の空間で、笑顔をたたえる店員さんと会話を楽しみながら商品を選ぶ……そんな時間が、何気ない日常に心豊かなひとときをもたらしてくれそうです。

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文:佐藤理菜子 撮影:マツダナオキ