なんでも手伝うのはダメ!?子どもの自立をうながせるのはどんな親?【親野智可等さん・第2回】 | ママスタセレクト
ときにわが子の至らなさが気になってしまうことがある、小学生の子育て。なかには「子どもの悪いところをどうにか直したい!」と、子どもに叱ってばかりで自己嫌悪になる人もいるでしょう。またなんでも手を貸してしまい「子どもが自立できないのでは?」と不安になる人もいるかもしれません。今回はあるママのお悩みをもとに、教育評論家の親野智可等さん(以下、親野さん)に、子どもの短所や苦手との向き合い方について教えていただきました。
親がなんでも手伝ってしまうと子どもの自立を妨げる!?
【ママのお悩み1】私には低学年の女の子がいます。娘はなんでも準備に時間がかかり、塾や習い事に行くのに遅れてしまいます。つい心配で私が準備を手伝ってしまうのですが、大丈夫でしょうか。
親野さん:子どもの準備を手伝ってしまうと「子どもが自立できないのでは?」と心配なんですね。結論から申し上げると、親が子どもの準備に手を貸すことにまったく問題はありません。親御さんからすると「大人になると短所や苦手は直らない。小さいうちなら直るだろう」といった気持ちがあるからこそ、悩まれるのだと思いますが、それは迷信です。実は子どものうちに直すのは難しくて、かえって大人になってからのほうが直ります。
――子どものうちに悪いところを直したいと思っていても、直らないこともあるのですね。
親野さん:そうです。かえって大人になってからの方が苦手なところが直せます。たとえば、会社に遅刻したり書類を忘れたりすると「会社をクビになってしまう」と危機感を抱きますよね。それでは困るので「遅刻しないようにしよう」「整理整頓を心がけよう」と決意ができます。しかし「いま・この瞬間」を生きている子どもたちは、自分の失敗で人生が台無しになるような危機感を持っていません。ですから、子どものうちから悪い癖が直るとは限らないのです。
――とはいえ子どもにはつい、直そうとして叱ってしまいますが……。
親野さん:この相談者さんの娘さんは、自分でテキパキと準備をする子ではないんですよね。もちろん低学年でもテキパキと準備する子もいますよ。それは生まれつきのものなので、親のしつけの問題ではありません。ですから、親御さんは子どもの悪いところに目を向けるのではなく、子どもの良いところを見つけて褒めて伸ばすように心がけてほしいですね。
――では、何もしなくていいのでしょうか?
親野さん:もちろん親御さんが工夫してあげることは大切です。時間にルーズな子どもには「模擬時計」をおすすめしています。たとえば「朝の着替えの時間」や「学校に登校する時間」「宿題を始める時間」「寝る時間」の4つの時間を指した時計の絵を紙に描くのです。そしてアナログ時計の上下左右4ヶ所貼っておきます。すると、子どもは実際の時計と「模擬時計」を比べて時間を意識し、行動するようになります。ただし親の工夫には限界がありますから、そのときはサポートしていけばいいですよ。
子どもをサポートし続けることは子どもの自立につながる
――工夫してもうまくいかないときはサポート、ということですが、どの程度子どもに関わればよいのでしょうか?
親野さん:もし親が工夫してもうまくいかない場合は「一緒に準備しようね」と声がけするといいでしょう。それでも無理だったら、子どもの状況にも寄りますが、親御さんがかなりの程度やってあげてかまいません。「子どもを甘やかしているのではないか」と悩む人がいますが、そんなことはありません。むしろそのほうが子どもに愛情が伝わり、自然と言うことに聞くようになります。その結果、子どもの自立にもつながるんです。もちろん準備してあげるときにいちいち文句を言ってしまっては台無しですから気を付けましょう。
――親のサポートが「子どもの自立」につながるということですか?
親野さん:これは、ふた組の年少さんを対象にしたある研究で明らかになっています。ひとつ目のクラスでは「靴下を履けない」「ボタンがはめられない」といった子どもができないことを、先生が叱って手伝いません。もう一方のクラスでは、先生は子どもを叱らずに手伝います。
1年間経過観察を続けた結果、後者の子の自立度合いが上がることがわかったのです。一方、前者の子どもは「自分はダメな子なんだ」とマイナスの自己イメージを抱くようになりました。さらに言うと、叱ってばかりの先生を嫌いになってしまいました。
子どもは嫌いな人の言うことを聞きません。その人が好きだから聞くわけです。それは家庭でも同じなのではないでしょうか。
【編集部後記】
「大人になり危機感を抱けば悪いところは直る」と語る親野さん。これまで子どもの準備に手を焼いていたママは、ホッとしたのではないでしょうか。さらに「子どもの準備は親がサポートするほうが、子どもの自立につながる」と親野さんは言います。まずは親が工夫してサポートしつつ、それでもダメなら手伝う。子どもの悪いところにだけ目を向けるのではなく、子どもに愛情が伝わるような声かけをしていきたいですね。
【もっと読む】専門家・トップランナーのインタビュー
取材、文・安藤永遠 編集・荻野実紀子 イラスト・マメ美